五鬼 (ごき?)


ある雨の夜、格おっさんという男が久見浜湾の大明神岬の近くで夜釣りをしていた。
その時、対岸から「格おっさん、ぼたもちを喰わせてやるから来いや」と声が聞こえた。
ぼたもちが好きな格おっさんは喜び、舟で対岸に渡ったが、そこには誰もいなかった。
すると今度は大明神岬の方から「格おっさん、来いや」と自分を呼ぶ声がする。
その方向へ進むと、それに合わせて声も移動していく。
舟を下りて陸から声を追ってみても、声は遠ざかるばかりだった。
諦めて舟に戻ると、釣った魚が一尾もなく、釣り餌も空になっていた。
格おっさんは村へ帰ろうと舟を漕ぎ出したが、次第に雨が強まり、蓑笠から滴る雫が光り始めた。
不思議に思いながら舟を漕ぎ続けるが、一向に岸に辿り着かない。
一心不乱に漕いでいる内に夜が明け、やっと方角がわかるようになった。
ようやく岸に辿り着いた格おっさんはその場に倒れ、数日間寝込んだという。
村では「格おっさんは“五鬼”につけられたのだ。前にも一度こんなことがあった」と噂されたという。

『丹後の民話 第四集 ふるさとのむかしばなし』「五鬼」より


名前は違うものの、同じ久美浜町の“うしおに”とよく似ています。
というか『くみはまの民話と伝説』にあるうしおにの話と内容はほぼ同じですね。おっさんがぼたもち好きなところも含め。


伝承地:京丹後市久美浜町・久美浜湾