大坊さん (おおぼんさん)


昔、明田に喧嘩ばかりする夫婦がいた。
ある日の朝四時頃、夫がトイレに行くと、大きな大きな“大坊さん”が門の所に立っていた。
「思うようにならなかったら、向かいの山の麓にある病院で手を叩いて喚け。そうすれば迎えに来てやる」
大坊さんはそう言って消えた。
数日後の夜、夫婦はまた喧嘩をし、夫はとうとう家を出て行ってしまった。
娘のお春が後を追うと、夫は着物の裾も上げずに川の中に入り、歩いて渡った。
そこでお春が「父さん、戻れ戻れ」と呼びかけながら追いかけると、夫は「そんなに言うなら帰ろう」と言って家に戻った。
夫は「大坊さんに来い来いと言われたので向かったが、あまりにもお春が喚くから戻って来た」と語った。
夫は狸に憑かれたのだという。

『丹後の民話 第一集 -いかがのはなし-』「おおぼんさんがまねいた」より


伝承地:京丹後市大宮町明田