木津の狸 (こづのたぬき)


昔、木津の山中に真蔵寺という古寺があり、その近くに沢山の狸が棲んでいた。
ある夏の日、寺の坊主が昼寝をしていると、狸が来て坊主の頭を両手で抱え「ヨーイ、トタン。ヨーイ、トタン」と、持ち上げては落とすことを繰り返した。
数日後、また坊主の昼寝中に狸が現れ、頭を持ち上げては落とすので、怒った坊主は狸にも同じことをしてやろうと考えた。
山の中で木の根を枕に寝ている狸を見つけると、坊主は頭を持ち上げ「ヨーイ、トタン。ヨーイ、トタン」と落とした。
それから、坊主と狸は寝ている相手の頭を持ち上げては落とす、という攻防を繰り返した。
だがある日、坊主は昼寝している狸の頭を大きな棒で叩いた。
狸は「私は頭を上げ下げしているだけなのに、棒で殴るなんてひどい。恨むぞ」と言いながら坊主を追いかけた。
すると坊主は狸を棒で殴り殺し、狸汁にして村人と共に食べてしまった。
その時、殺された狸の祖母が寺へ来て、戸の隙間から「美味いか、美味いか、許せない、恨むぞ、恨むぞ」とすごい声を出した。
しばらくして、狸の大群が村に押し寄せ、悪戯をするようになった。
坊主が自身の行いを後悔し、殺した狸を懇ろに弔うと、それ以来、狸が村に悪事を働くことはなくなったという。

『郷土の民話(丹有編)』「木津の狸(今田町)」より


伝承地:丹波篠山市今田町木津