偽汽車 (にせきしゃ)
①南丹市園部町の偽汽車
明治四十三年(1910)八月、山陰線が開通し京都-舞鶴間を汽車が通るようになった。
ところが汽車が船岡の諏訪山トンネルにさしかかると、赤い火がチラチラと燃えながら近づいて来たり、正面から汽車が逆走して来たりした。
運転手が急停車すると、赤い火や汽車は消えたという。
諏訪山トンネルの掘削中、ある作業員が寝ているところを狐に鼻を舐められ、怒って殺してしまったことがあった。
人々はその狐の祟りだと噂し、伏見稲荷大社から正一位の位を貰い、トンネルの上に祠を建てて狐の霊を祀ったという。
②与謝野町の偽汽車
与謝郡のある町の町長が夜に線路そばの道を歩いていると、汽車が横を通り抜けていった。
汽車の窓からは明かりが漏れ、ポツポツと点灯していた。
だがそれから10m程の間隔を置いて、また汽車が後方から走ってきた。
後ろの汽車はどんどん進み、やがて前を走る汽車を追い越して行った。
その後、線路の上で狐が死んでいたという。
③京丹後市大宮町の偽汽車
愛染山には狐が棲んでおり、よく芝居をしていたという。
ある時、愛染山の狐は汽車に化けて線路を走っていた。
すると対面から本物の汽車が走って来た。
そのまま狐と汽車は衝突し、後には狐の轢死体が残されていたという。
『園部町の口碑、伝承 おじいさんたちの話』「トンネルとキツネ」
『狐をめぐる世間話』「汽車などに化ける」
『おおみやの民話』「汽車にひかれた狐」より
“偽汽車”とは、狐狸などが汽車に化けて線路を走るという怪異で、鉄道網が発達した明治時代頃から各地で目撃されるようになりました。
丹波には南丹市、丹後には与謝野町と京丹後市に伝わっていたので、まとめて紹介しました。
伝承地:南丹市園部町・与謝野町・京丹後市大宮町