こんな顔 (こんなかお)


昔、由良川と土師川が合流する所に川獺が棲んでいた。
そこに松縄手の市助という老人が落とし罠を仕掛けたところ、オスの川獺が罠にかかり、捕まりはしなかったものの指を挟んで怪我をした。
それを見た妻の川獺と娘の川獺は怒り、市助に復讐を誓った。
その夜、市助は京口橋の堀の端でしゃがんで泣いている娘に出会った。
心配した市助が肩に手を置いて声をかけると、娘は静かに立ち上がり、こちらを振り返った。
その口は耳元まで大きく裂けており、娘は恐ろしい形相で「カー!」と叫び声を上げた。
市助は驚いて一目散に逃げ出した。すると、向かいから手拭いを被った女が提灯を下げて現れた。
市助は女の足元にへたり込み、「出た! 出た!」と、先程の口裂け娘のことを話すと、女は手拭いを取って顔を近づけ「こんな顔か?」と言った。
見上げると、耳まで口が裂けた女が笑っていた。
市助が気を失うと同時に女も提灯も消え、辺りは暗闇に包まれた。

『福知山の民話と昔ばなし集』「川猟師と川うそ」より


『全国昔話名彙』でいう「二度の威嚇」系の話です。
また伊根町には顔ではなく足を見せてくるタイプの話が伝えられています。

伝承地:福知山市京