あの世の入り口 (あのよのいりぐち)


第二次大戦中、新井の少女が舞鶴の郡是製糸工場で働いていた時、血液型を調べるために採血をした。
だが注射針がうまく刺さらず、何度も抜き差しされている内に痛みで気を失った。
少女は気づくと、笛や太鼓の音が鳴る綺麗な川の畔にいた。
対岸には柔らかそうな芝生が生え、そこに立派な着物を着た美しい姫が立っており、少女を手招きしていた。
少女は川を渡ろうと思ったが、ふと自分の名前を呼ぶ声が聞こえ、そこで意識を取り戻した。
目覚めた時には病院にいたという。
その後、近所の老婆にその話をしたところ、「私も熱が出て寝込んでいた時、いつの間にか川の畔にいた。対岸には五、六人の坊主がいて「ようかんあげるから来い」と誘われたので川を渡ろうとした。だが近くにいた人に「行ってはいけない」と止められ、そこで目が覚めた」と、少女と同じような体験を語ったという。

『語りによる日本の民話 10  丹後 伊根の民話』「あの世の入り口」より


伝承地:伊根町新井(舞鶴市)