六助稲荷 (ろくすけいなり)
峰山の近くに六助という貧乏な男がいた。
ある秋の日、六助と妻が小原境の峠で笹を刈っていると、狐の穴を見つけた。
六助は「穴の入口に笹が茂っている。これでは出入りする度に露がついて冷たいだろう。それに穴の中は陰気だし、寝ながら月を拝むことも出来ない」と言って、妻の制止を無視して穴の笹を全て刈り取ってしまった。
その夜、大きな白狐が六助夫婦の夢に現れ「今日は穴の入口を掃除してくれてありがとう。おかげで露もかからず、寝ながら太陽も月も拝めるようになった。お礼に、もうすぐ伏見稲荷で行われる富くじ(宝くじ)で、必ず大当たりを引けるようにしてあげよう。くじを買う資金がなければ障子戸を売って京に上ると良い」と告げた。
六助は白狐のお告げを信じ、家の障子戸を売り払って資金を作ると、伏見稲荷へ向かった。
だが富くじを売り出すのは四ヶ月先、来年の二月だと販売員に言われ、六助は落胆して自宅へ帰った。
そして夫婦は障子戸のない吹き曝しの家で「寒い、寒い」と震えながら、布団を引っ張り合って眠った。
すると再び白狐が夢に現れ「六助、お前が穴の入口の笹を刈ったせいで私は寒さで眠れなくなった。お前も障子戸がなければ、開閉の手間もかからないし、私と同じように寝ながら月見も出来るようになるから満足だろう。もう少しすれば雪見も出来るようになるぞ、喜べ喜べ」と言って笑った。
翌日、六助夫婦は山へ行き、石を立てて油揚げを供え、白狐に謝罪したという。
石は「六助稲荷」と呼ばれ、人々が拝んでいたが、今はもうなくなってしまったという。
『丹後の民話(1) 狐狸ものがたり』「六助稲荷」より
善意とはいえ、巣穴に余計なことをした六助を言葉巧みに騙して自分と同じ目に遭わせるというやり口、陰湿で良いですね。
ちなみに南丹市には、巣を壊された狸が夜な夜な「寒い寒い」と訴えに来る話が伝えられています。
伝承地:京丹後市弥栄町吉沢