狸の金玉 (たぬきのきんたま)


昔、ある男が出石(兵庫県豊岡市)から久美浜の自宅に帰っていたが、峠の途中で日が暮れてしまった。
男は提灯を借りるため近くにあった一軒家を訪ねると、中では老人が囲炉裏の火に当たっていた。
老人は「提灯も蝋燭もないが、ちょうど火を焚いているのであたっていけ」と勧めてきた。
男はそれに従い火にあたっていたが、その内に眠気が来てその場に寝転がった。
床には茶色いような白いようなものが一面に敷かれており、ほこほこと心地良い温もりを感じた。
男は不思議に思い、敷物を爪で掻いてみると、横にいる老人が顔をしかめた。
違う所を爪で掻いてみても、また老人は同じように顔をしかめる。
男は「おかしいな」と老人を見ていたが、その内にくたびれて眠ってしまった。
翌朝、目覚めると家はなくなっており、男は広い野原に寝転んでいたという。

『丹後の民話(1) 狐狸ものがたり』「狸の金玉、八丈敷」より


老人は狸が化けたもので、男が敷布団代わりにしていたものは、狸が拡げた金玉袋だったということですね。
それは爪で掻かれたら痛い……。


伝承地:京丹後市久美浜町布袋野・駒返峠?