大蛇の妄念 (だいじゃのもうねん)
切畑の権作という男は「水無し大瀧谷」という山の畑で粟や蕎麦などを作っていた。
ある年の秋、権作が作物の収穫に山へ向かうと、畑は大蛇によって踏み倒され、食い荒らされていた。
怒り狂った権作は死に物狂いで大蛇と戦い、青だら(タラノキ)という表面にトゲの生えた木で大蛇の頭を何度も殴りつけて退治した。
だがその死闘で畑は荒れ果ててしまい、権作は呆然自失のまま家へ帰った。
そして風呂に入ろうとしたところ、風呂場に小さな蛇がいたので、権作は悪態を吐いて蛇を外へ放り出した。
入浴後、夕食を食べようとすると箱膳の中にまた小蛇がいた。権作は気味悪く思いながら、これも外へ捨てた。
だが食事を済ませて床に就くと、今度は布団の中に小蛇が入り込んでいた。
それから何度も小蛇の侵入が続いたため、権作は大蛇の妄念に違いないと悟り、供養のために廻国巡礼を始めた。
数年後、巡礼を終えた権作は村に戻り供養塔を建てたが、それでも大蛇の妄念は消えず、権作の息子にまで不幸が続くようになった。
息子もまた廻国巡礼に旅立ち、帰宅した後に権作の建てた供養塔の横へ新たな供養塔を建て、大蛇の霊を慰めたという。
ちなみに大蛇の死体は谷間に落ちて腐ったため、その悪臭はいつまでも消えず、下流の水は牛ですら三年は飲まなかったという。
『丹後の民話 第二集 ふるさとのむかしばなし』「大蛇を退治した権作さん」より
親子二代にわたって祟り続けるとは、蛇の執念は恐ろしいですね。
伝承地:京丹後市網野町切畑