井尻の狼 (いじりのおおかみ)


昔、井尻に一軒の農家があったが、老婆を残して家族全員が死に絶えた。
それから家に一匹の狼が棲み着くようになり、老婆は恐怖心から狼に食べ物を与え、共に暮らすようになった。
ある時、旅の老僧が老婆の家を訪ね、狼を見て「何故狼を養っているのか」と聞いた。
すると老婆は「家族が死んだ後、狼が居着くようになったのだ」と涙ながらに語った。
話を聞いた老僧は「私に任せなさい」と言って一巻の経を読んだ。
すると不思議なことに、狼の姿は消え失せた。
老僧は狼の犠牲になった人々の供養碑を建てることを勧め、去っていった。
村人たちは人を襲う狼が消えたことを喜び、老僧の言葉に従って供養塔を建立したという。

『檜山村誌』「恵長の供養塔(井尻の狼)」より


『京都 丹波・丹後の伝説』では、老婆は独居の寂しさから狼と暮らす→だが狼は人間に子供を殺された恨みから、家の近くを通る者を喰い殺して報復する→それを知った老婆は泣く泣く狼を銃殺し、供養塔を建てて行方をくらます……という話になっています。


狼塚
井尻の裏路地にある
狼塚(供養塔)。
表面には「奉納大乗妙典扶桑廻國供養 願主恵長」と彫られています。


伝承地:京丹波町井尻(Googleマップに狼塚の位置が載っていますが、実際はもう少し西の方にあります)