肩切り地蔵 (かたきりじぞう)


貞観二年(860)、神池寺の門前町である湯谷(市島町多利)は茶屋が軒を連ね、人の往来も多かった。
三井庄の由松という男は、湯谷の茶屋で働くお美津という娘と恋仲にあった。
いつものように逢瀬を楽しんで別れた直後、由松の元に「今夜十時過ぎに腰かけ松まで来て欲しい」というお美津からの便りがあった。
不審に思いながら腰かけ松に行くと、程なくしてお美津が笑顔で現れた。だがいつもと様子が違う。
彼女は笑うと片頬にえくぼが浮かぶが、目の前で笑うお美津の顔にえくぼはなかった。
そして夜なのにお美津の着物の縞目ははっきりと見え、触れたその手は冷たかった。
由松は護身用の脇差しを抜き、無我夢中でお美津を袈裟懸けに斬りつけた。
すると「カチン」という堅い音が聞こえ、その瞬間、由松は気を失った。
由松が目を覚ますと朝になっており、そばには袈裟懸けに斬られた石地蔵があった。
色恋に迷い、狐狸に誑かされて地蔵を斬った己の罪の深さに、由松は戦いたという。
この地蔵は“肩切り地蔵”と呼ばれ、肩から上のできものに霊験があるため、願をかける者が多かったという。

『由緒を尋ねて』「神池寺の肩切り地蔵」より


肩切り地蔵
神池寺境内にある肩切り地蔵堂。
元々、肩切り地蔵は春日町の大路にある椎の根元に祀られていましたが、その後神池寺に移祀されました。

肩切り地蔵近影
肩切り地蔵近影。
ピントが合ってないのでわかりにくいですが、上部(首?)が欠けているように見えます。


伝承地:丹波市市島町多利