龍のつぼ (りゅうのつぼ)


世屋川に架かる橋の近くに“龍のつぼ”という穴があり、そこに金の玉を咥えた大きな龍が棲んでいる。
龍は雨の後、濃い霧が立ち込めた時だけ現れるが、その姿は頭の良い人でなければ見えないという。
ある時、賢く勇気のある若者がこの橋の近くへ行き、何日も龍の出現を待ち続けた。
ところが晴天の日が続いたので、若者は諦めて帰ろうとした。
すると急に空が黒雲に覆われ、雨が降り出し、辺り一面に濃い霧が立ち込めた。
そして龍のつぼがはっきりと見えるようになり、そこから玉を咥えた龍が徐々に姿を現した。
若者は龍に睨みつけられて腰を抜かしたが、何とか橋の袂に隠れ、震えながら様子を窺った。
そして龍は橋の辺りまで来ると、凄まじい音を立てながら空へ昇り、姿を消した。
その後、若者は龍が消えた橋を「りゅうきえる(龍消える)橋」と名づけたが、伝聞で次第に発音が訛り「りゅうけい(龍渓)橋」と呼ばれるようになったという。

この他、世屋の南にある成相寺にも龍のつぼにまつわる伝承がありますので、続けて紹介します。

昔、彫刻職人の左甚五郎は成相寺に納める龍の彫刻を依頼されたが、見たことのない龍の姿をどう彫るか悩んでいた。
そんな中、甚五郎の夢に龍が現れ、棲み処の滝壺(龍のつぼ)の場所を教えた。
甚五郎は早速夢で教えられた道を辿って滝壺へ行き、そこで三日間祈りを捧げた。
すると渦を巻き白く沸き返る滝壺から龍が姿を現し、瞬く間に空へ昇って雲の中に消えて行った。
甚五郎はこの龍の姿を見て「真向の龍」の彫刻を完成させたという。

『宮津市史 史料編 第五巻』「龍のつぼ」
『京都 丹波・丹後の伝説』「世屋の龍渓橋」
『現地案内板』より


龍渓橋
世屋の龍渓橋。橋から川面まで30mもあります。
試しに橋から下を覗いてみましたが、あまりの高さに卒倒しそうになりました。

龍のつぼの案内板
龍渓橋の奥にある“龍のつぼ”の案内板。繁茂した草に阻まれて滝壺には行けませんでした。
看板には「左甚五郎「真向きの龍」伝説の舞台」とあります。

真向きの龍
成相寺の本堂に納められている「真向きの龍」
かっこいい。


伝承地:宮津市下世屋