吠える龍の彫刻 (ほえるりゅうのちょうこく)


明治の中頃、下吉田村は大洪水に見舞われ、田畑や人家は水没、寺も流されてしまった。
洪水が去った後、村人たちは寺を再建するため、若狭(福井県)から大工を呼び寄せた。
大工は村人の家に泊まり込み、昼は寺の工事をし、夜になると本堂に飾る龍の彫刻を彫っていた。
やがて本堂は完成したが、龍の彫刻は期日までに間に合わなかった。
大工は若狭へ帰った後も未完成の彫刻のことが気になり、熟睡出来ない日々が続いたという。
その後、大工が宿泊していた家では、夜になると二階からコトコトと物音がするようになった。
家人が二階へ上がってみても、造りかけの龍の彫刻があるだけで特に異常はない。
不思議に思い村人たちに相談すると「それは彫りかけの龍が吠えているのだ」と言われた。
そこで村の大工に頼み、龍の彫刻を完成させると、それから物音は聞こえなくなったという。
完成した龍の彫刻は頓乗寺に納められ、今も本堂の向拝に飾られている。

『美山伝承の旅』「ほえるりゅう」より


若狭の大工はちゃんと熟睡出来るようになったのでしょうか。


龍の彫刻
頓乗寺の本堂に飾られた龍の彫刻。
背面には明治天皇が詠んだ御製(和歌)が書かれています。


伝承地:南丹市美山町下吉田・頓乗寺