生きながら鬼になった人 (いきながらおにになったひと)


昔、丹波国さいき村(佐伯村?)に貧乏な男がいた。
ある日、男は山で薪を取っている途中、喉の渇きを覚え、水を飲むために谷へ降りた。
すると水の中に大きな牛のようなものが横たわっていた。
よく見ると、それは長い年月をかけ山から流れ落ちて固まった漆だった。
男はその漆を回収しては飛騨や京に売ることを繰り返し、やがて長者となった。
ところがある性悪男がその話を聞きつけ、長者の男を脅して谷から追い払い、漆を全て我が物にしようと企てた。
性悪男は大きな馬の面を着け、赤熊を被って鬼の姿になり、漆の谷の水底へ潜って長者を待ち伏せた。
そして性悪男の計画通り、漆を取りに来た長者は水底の鬼に恐れ戦き、谷から逃げ去った。
性悪男は成功を喜び水中から出ようとしたが、何故か動くことが出来ず、鬼の姿のまま溺れ死んだという。

『諸国百物語』「丹波の国さいき村に生きながら鬼になりし人の事」より


伝承地:亀岡市稗田野町佐伯