ものを言った大魚 (ものをいったたいぎょ)
当野の山の上に池が五、六面あり、それぞれに主と呼ばれる生き物が棲んでいた。
ある時、当野村の「榧の木」という家の若者が、山の上の池に行って主の大魚を捕まえた。
若者は喜び、「帰って味噌汁にして食べよう」と呟きながら家路を急いだ。
その途中、ある池の横を通り過ぎようとした時、「金剛寺さん、どこへ何しに行かれるのですか」と、池の中から声がした。
すると大魚が「当野の榧の木へ味噌汁を吸いに行く」と答えた。
若者は大変驚き、帰宅してからも数日間は起き上がれなかったという。
この時、池から声をかけたのはそこに棲む主で、若者が捕まえた大魚は三田の奥山(兵庫県三田市上本庄)にある「金剛寺池」の主だったと言われている。
『たんなんの民話と伝説』「ものを言った大魚」
これは『日本昔話大成』でいうところの「物いう魚」タイプに分類される話で、他にも京都市や京丹後市などに伝えられています。
『郷土の民話(丹有編)』にも同じ話がありますが、大魚が金剛寺池の主だという記述は見られず、大魚を獲った帰りに声をかけるのも池の主ではなく、若者の友人となっています。
(友人が大魚を持った若者に「どこへ行く」と尋ねる→大魚が「当野の榧の木へ味噌汁を吸いに行く」と答える→若者ビックリ)
ちなみに『多紀郷土史考・下巻』によると、この大魚の正体は語り部によってまちまちで、鯉、鱒、または「ぬすんこ」などと言われているようです(「ぬすんこ」が何なのかは不明。魚の方言名?)。
伝承地:丹波篠山市当野(三田市上本庄)