熊と恩知らずの男 (くまとおんしらずのおとこ)


ある男が雪の日に三浜の山を越えようとしたが、吹雪に見舞われ立ち往生した。
そこに大きな熊が現れ、男を洞穴に連れ込むと「舐めろ」と言って手を差し出した。
舐めてみると熊の手は砂糖のように甘かった。そうして男は熊の手を舐めて空腹を凌いだ。
十日後、無事に村へ戻った男は熊に助けられたことを人々に話した。
すると話を聞いた猟師が「熊の居場所を教えてくれ。礼はする」と持ちかけてきた。
男は欲に目が眩み、恩を忘れて猟師を洞穴へ案内すると、中から件の熊が出てきた。
早速猟師は銃で撃とうとしたが、熊は両手を合わせ「待ってくれ」と頼んだ。
何をするのかと見ていると、熊は自分が助けた恩知らずの男を捕まえ、股から真っ二つに引き裂いた。
熊は男を惨殺した後「さぁ撃て」と言ったが、猟師は撃つことが出来なかったという。

『わが郷土 丸山小学校創立百周年記念誌』「熊と恩しらずの男の話 -小橋-」より


「命の恩熊を裏切った人間がその熊に復讐される」という話は静岡県にも伝えられています。

雪で道に迷った猟師が熊穴で三匹の熊に助けられる(すごく美味しい熊の手を舐めて飢えを凌ぐ)→友達の猟師に話すと「案内して」とせがまれる→案内して熊を三匹とも撃ち取る→助けられた方の猟師が「この熊が一番多く手を舐めさせてくれたんだよ」と言って親熊の手を持とうとする→その熊の死体が喉に噛みつき猟師は殺される。(静岡県浜松市)
……というものです。

ちなみにこの話が載る『静岡県伝説昔話集』は国立国会図書館のデジタルコレクションで閲覧することが出来ます。


伝承地:舞鶴市三浜