古狐の祟り (ふるぎつねのたたり)


昔、宮前村の近くに、手を握ってもらえばどんな難病でも全快すると言われる程の名医がいた。
そしてこの医者は、誰もが足を止めるような立派な邸宅に住んでいた。
ある小雨の夜、医者の邸宅に男が訪ねてきて「私の妻が難産で生死の程もわかりません。ご恩は返しますので、妻の元へ御足労預かりたい」と悲しげな声で頼んだ。
だがよく見ると男はいつの間にか古狐の姿に変わっていたので、医者は驚いて震えるばかりだった。
古狐は「畜生でもきっとご恩は返します。向こうの山で苦しんでいます」と消え入るように呟いて立ち去った。
だが医者は恐怖のため、古狐の頼みを聞き入れなかった。
数日後、村人たちが「向こうの山奥で狐の親子が死んでいる。難産だったんだな」と語り合っていた。
その後間もなく、医者の立派な邸宅は人手に渡ったという。

『丹波の伝承』「古狐の祟り」より


本文には「邸宅は人手に渡った」としか書かれていませんが、医者は古狐の祟りを受けて没落してしまったのでしょうか。


伝承地:亀岡市宮前町宮川