梨の木の狼 (なしのきのおおかみ)


ある秋の夕暮れ、宮村の大工が土師川沿いの梨の木という所で狼の群れに遭遇した。
大工は木に登って避けようとしたが、狼たちは一匹、また一匹と背中に乗り、櫓を組むように重なり合って登ってきた。
大工はたまらなくなり、玄翁で一番上の狼の頭を殴りつけると、狼は落下して土師川まで転がった。
それを見た他の狼たちは驚き、櫓を崩してどこかへ逃げて行った。
狼の難を逃れた後、大工は自宅へ戻ったが、夜なのに家の戸は開いたままで、いつも出迎えてくれる妻の姿も見当たらなかった。
行燈に火を灯すと、妻の手拭いを被った黒いものが物凄い勢いで外へ飛び出した。
急いで布団をめくると、妻は既に冷たくなっていて、辺りには狼の毛が散らばっていた。
大工は嘆き悲しみ「年中、山の木を伐っていたから山の神の罰が当たったのだ」と考え、祠を建てて山の神を祀ったという。

『福知山の民話と昔ばなし集』「梨の木の狼」より


いわゆる「千疋狼」系の話ですが、狼のボス的存在は出ず、また妻を殺された原因も「山の神の罰だ」という内省的な結論になっています。

丹後地域に伝わる千疋狼系のお話。


伝承地:福知山市三和町芦渕