消えた坊主 (きえたぼうず)


ある時、上乙見の寺の坊主は村人たちに「明日からある仕事をするのでしばらく寺へ来ないでほしい。こちらが良いと言うまで寺の中を見ないように」と伝え、寺に引きこもった。
だがそれから何日経っても坊主は一向に姿を現さなかった。
村人たちは堪えきれなくなり、ある日の夕方、密かに寺の戸の隙間から中を覗き見た。
すると中では二十人程の坊主が書き物をしていたので、村人たちは驚いて家へ帰った。
だが翌朝になると、あれ程沢山いた坊主は一人もおらず、寺は空き家になっていた。
そして部屋の中には約二百五十本もの大般若経が残されていたという。
この大般若経は上乙見の熊野神社に納められ、宝物として保存されている。

『和知町 石の声風の音』「上乙見の大般若経」より


伝承地:京丹波町上乙見