水底で舞う女 (みなそこでまうおんな)*
昔、京の都に宗治という狩人がいた。
ある日、宗治は狩りの途中で深山に迷い込み、山の主の大きな片眼の狐を射殺してしまった。
それから彼の家に不幸が続くようになり、宗治は都も弓も捨てて放浪した末、丹波国の砂木の里(南丹市美山町)に移り住んだ。
宗治は平穏な暮らしを願い、その地で耕作に勤しみながら念仏三昧の日々を送った。
ある日、宗治は念仏を唱えながら「獺走(おそばし)り」という、岩山と川に挟まれた隘路の上の畑を耕していた。
すると、どこからともなく妙なる調べの唄声が聞こえてきた。
唄声を辿って川の中を見ると、水の底で美しい女が舞を舞っている。
それを見た宗治は慌てて念仏を唱え、狩猟の半生に思いを馳せた。
そして獺走りに地蔵を祀り、山の主を射た所にも祠を建て、更に熱心に働くようになった。
それから十年後のある秋の日、宗治は馬にまたがって獺走りの岩山に立った。
耳を澄ませば、十年前と同じように水底から妙なる楽の音が聞こえてくる。
すると宗治は「南無阿弥陀仏」と唱え、馬と共に川の中へ飛び込んだ。
宗治の姿は水底にも岩の上にもなく、ただ岩に馬の蹄の跡だけが残されていた。
『美山伝承の旅』「獺走りの馬の足跡」より
水底で踊る美女は入水させようと誘う存在(山の主の祟り?)で、宗治は十年は耐えたものの、遂に誘惑に負けて馬もろとも川に身を投げてしまった、ということでしょうか。
伝承地:南丹市美山町高野(獺走りの位置は不明)