三台坊 (さんたいぼう)


昔、保津村の文覚寺に、人の心を見抜く力を持つ“三台坊”という坊主がいた。

ある時、村人が心の中では惜しいと思いつつ、銭や大根を寺へ寄進した。
すると三台坊は「惜しいと思いながら持ってきた物などいらない。その証拠に大根を切れば中から血が出るだろう」と言った。
村人が大根を切ってみると、中から血が出てきたという。
またある時、小僧が三台坊の汚れた衣服を見て「いい加減汚いから着替えましょう」と勧めると「一週間後に衣を持って来る人がいるからそれまで我慢する」と答えた。
一週間後、寺に衣を寄進する者が現れたという。

その頃、丹波亀山城では、天守閣にある笛が鳴り響いて止まらなくなるという異変が起こっていた。
保津村の坊主が五十人程集まって祈祷するも効果はなく、最後に三台坊が呼び出された。
三台坊は城へ来ると、天守閣の一番高い所へ登り、四股を三つ踏んだ。すると笛の音はピタリと鳴り止んだ。
喜んだ殿様は三台坊に褒美として請田山を与えたという。

そんなある日、三台坊は突然姿を消した。
村人たちは方々を捜し回ったが見つからず、最後に請田神杜を訪れると、鳥居のそばに三台坊の履き物が脱ぎ捨ててあった。
三台坊はいつも口癖のように「私は天へ昇る」と言っていたので、ここから昇天したのだろうと考え、履き物を鳥居の下に埋めて石碑を建立したという。
また一説には、三台坊は「私はもうじき死ぬから付き添ってくれ」と、八人余りの坊主に寝ずの番を頼んだが、いつの間にか姿を消し、請田神社の鳥居のそばに履き物を脱ぎ捨てて昇天していたという。

『丹波の伝承』「文覚寺の三台坊」
『口丹波口碑集』「三締坊(保津村)」
『保津百景道しるべ』「三諦坊物語」より


三台坊(三締坊、三諦坊とも)は現在の京都市西京区出身の僧で、実在の人物だったと伝えられています。
三台坊の逸話は上記以外にも多数残されていますが、その幾つかを以下に紹介します。

●三台坊が閑谷の山を歩いている時、頂上から大岩が転がり落ちてきたが、扇を開いて岩を受け止めた。
●村の若者が「流石の三台坊でも剃刀で切ったら痛がるだろうか」と話した後に寺へ行くと、三台坊は「私でも切られれば痛い」と答えた。
●村人が餅を寺へ持って行こうとしたところ、妻が「九つも持って行くな。七つでいい」と文句を言った。無視して重箱に餅を九つ入れて寺へ行くと、三台坊は重箱の包みを解く前に「二つ減らして七つにしなさい」と言った。
●亀山城の異変を解決した時、殿様に何でも願いを叶えてやると言われ、三台坊は「藁一束分の土地が欲しい」と請うた。殿様が許可すると、三台坊は幾つもの藁を繋ぎ合わせて長い長い縄を作り、請田山を囲い込んだ。こうして三台坊は請田山全てを手に入れた。
……などなど。

ちなみに『口丹波口碑集』『保津百景道しるべ』では、亀山城の異変は「笛が鳴り止まなくなる」ではなく、「城が少しずつ傾いて唸り声を上げる」という別の怪異になっています。


伝承地:亀岡市保津町