天狗の土俵場の大蛇 (てんぐのどひょうばのだいじゃ)


明治から大正の頃、報恩寺村の西の天狗山に「天狗松」という太い松があった。
松の梢からは常に雫が滴り落ち、そばに行くと天狗が腹痛を起こして帰れなくすると言われていた。

また天狗山の頂上は報恩寺村と川北村の村境で、川北村側は草木も生えない赤づれ山(崩れやすい赤土の山)だった。
そこに相撲の土俵のような丸形の平地があり「天狗の土俵場」と呼ばれていた。
天狗の土俵場は常に真ん中から箒で掃いたように丸く、掃除されている場所だった。
そこは大蛇の砂遊び場で、大蛇は頭を真ん中にしてグルグルと体を巻きつけ、尾で砂を体にかけて遊ぶという。
報恩寺村の東の小畑村(綾部市)にはこの大蛇を見た者が多くいたが、皆熱を出して長い間寝込んだという。

ある時、報恩寺村の子供が天狗の土俵場へ遊びに行くと、ブルブルと震えて動かない兎がいた。
不思議に思い家へ連れ帰って世話をすると、やがて兎は元気に跳ね回るようになり、山へ戻って行った。
これは天狗の土俵場の近くにいた大蛇が兎を狙い、何らかの術をかけていたのだという。

『語りつぐ 福知山老人の知恵』「天狗松(山)」より


伝承地:福知山市報恩寺・川北(天狗の土俵場の位置は不明)