礼に来た狸 (れいにきたたぬき)
昭和五年(1930)頃、足を怪我している男が河原で薪取りをしていると、目の前に手負いの狸が現れた。
鎌で斬りつければ殺せる距離まで近づいて来ていたが、足の悪い男は狸に哀れみを感じ、手を出さなかった。
すると狸は男に会釈し、傷ついた足を引きずりながら繁みに消えて行った。
間もなく猟師が来て「狸が来なかったか?」と尋ねられたが、男は狸が去った方向とは真逆の方向を伝えた。
翌日、男が同じ場所で休憩していると、播州寺の和尚が川の中をガバガバと音を立てながら下って来た。
そして和尚は男と目が合うとニタニタと笑いながら会釈し、篠竹の繁みに消えて行った。
男は「昨日逃がしてやった狸が和尚に化けて礼に来たんだな」と思ったという。
『北はりま、丹波昔ばなし百話』「礼に来た狸」より
伝承地:丹波市山南町(詳しい場所は不明)