蛇憑き (へびつき)


昔、本庄上の伊蔵という男は、地区で一番の富豪だった太田家の邸宅を買い取った。
ある時、伊蔵が蔵を改修するために床をめくると、床下で黒い蛇が鎌首をもたげていた。
蛇は追い払っても逃げなかったので、スコップで引っかけて外に放り出した。
だがそれから伊蔵は原因不明の病気を患い、まともに歩くことすら出来なくなった。
そして京都の医者に診てもらうため、妻の兄に背負われて駅まで行ったが、伊蔵は首がだらけていたので運ぶのに苦労したという。
だが結局医者でも原因はわからず、次に拝み屋に拝んでもらったところ「蛇が憑いている」と言われた。
拝み屋は「人目につかないよう蔵に塩と米を供えた後、それらを川に流せ。それを一週間程続ければ治る」と助言した。
そして家族は拝み屋の言う通りにすると、伊蔵は一週間後に元気を取り戻したという。
伊蔵に憑いた黒い蛇は、太田家の時代から家に棲んでいる蛇だった。

『京都府伊根町の民話 泉とく子・藤原国蔵の語り』「蛇が憑く」より


伝承地:伊根町本庄上