尻引きマント (しりひきまんと)
昔、本郷川(加古川)に“尻引きマント”という河童が棲んでいた。
川の下流にある蔵ヶ渕を青い背中を見せて泳ぐ姿や、諏訪神社近くの一本柳の下で頭の皿に水をかけている姿を見た人がいるという。
ある夏の日、壮治という泳ぎの得意な子供が友人たちと本郷川で遊んでいた。
ところが蔵ヶ渕に差しかかった時、壮治は突然「きいっ」と声を上げ、目を見開いたまま水中に沈んでいった。
友人たちは壮治が尻引きマントに襲われたと思い、村人に助けを求めた。
そして村人たちが懸命に捜索すると、壮治は土手の下の草むらに転がっていた。
「鮎のようなキュウリのような臭いがしたと思ったら、急に足を引っ張られる感じがした」
そう話す壮治の足首には、水かきのある手形がついていた。
尻引きマントは壮治を水中へ引きずり込んだものの、素早く浅瀬に逃げられてしまったので、それ以上の追跡を諦めたのだという。
そしてその日の夕方、壮治の祖母は尻引きマントの好物のキュウリを本郷川まで運び、蔵ヶ渕へ流したという。
『丹波のむかしばなし 第五集』「本郷川の尻引きマント」より
ちなみに尻引きマントは太陽が怖いそうです(頭の皿が乾くから)。


