向きを変えた大黒天 (むきをかえただいこくてん)


養老村のお堂に、木彫りの大黒天像が祀られていた。
ある時、よそ者の男が村を訪れ、村人たちが大黒天像を大切に扱っている様子を見て「あの像は名のある人の作品かもしれない。換金したら楽な暮らしが出来るのではないか」と考えた。
そして男は夜にお堂へ忍び込み、像を背負って村を抜け出した。
だが途中で腹が痛み出して歩けなくなり、その場に像を降ろして休憩した。
しばらく休憩していると、ふと背後から草ずれの音が聞こえた。
像を盗まれたことに気づいた村人たちが追ってきたのかと思い、男は後ろを振り返った。
すると前向きに降ろしたはずの大黒天像が、養老村のお堂の方角に向きを変えていた。
男は「腹が痛くなったのは、これ程あらたかな像を盗んだ罰だったのだ」と考え、急いで像を村のお堂へ戻したという。

『宮津の民話 -ふるさとのむかしばなし- 第一集』「大黒さま」より


伝承地:宮津市大島