消えた牛と婢 (きえたうしとはしため)


昔、三郡嶽の中腹に長者の屋敷があり、そこで一人の婢(はしため)が働いていた。
婢は屋敷で飼っている牛を大変可愛がっており、毎日密かに白飯を与えていた。
ところがそのことを長者に知られてしまい、婢は屋敷から追放された。
婢は行く当てもなく、泣きながら夜道を歩いていると、可愛がっていた牛が追いかけて来て彼女を背中に乗せた。
そして夜が明けた頃、野良仕事に出て来た村人たちは、婢を背に乗せて歩く牛を見かけた。
すると不思議なことに、牛と婢の姿が一瞬で消え失せてしまった。
後に事情を知った村人たちは婢を哀れみ、彼女たちが消えた所に藤森神社を建てたという。

『和知町 石の声風の音』「大成藤森神社の縁記」
『ふるさと口丹波風土記』「立木の牛」より


藤森神社
広野地区の藤森神社。
元々藤森神社は山の中の大成集落にありましたが、昭和四十年代に同集落が廃村になったことで、広野の藤森神社に合祀されました。
ちなみに藤森神社は、大江山の鬼退治に向かう源頼光一行を鼓舞した「和知太鼓」の発祥の地とされています。(『和知町誌 第一巻』)


伝承地:京丹波町広野・藤森神社