狼と塩売りばさ (おおかみとしおうりばさ)
昔、小橋に塩を作る家があった。
その家の「塩売りばさ」という女は、作った塩を野原や平へ売りに行っていた。
ある日、塩売りばさは野原からの帰り道で、人間の死体を食べている狼に遭遇した。
そこでばさは「良い漁が出来たなあ」と言って塩を撒いた。
翌日、同じ道を通ると、昨日の狼が出て来てばさの着物を引っ張り、巣穴まで連れて行った。
そしてばさを穴に入れると、狼は門番のように入口に座った。
するとまもなくゴーゴーと山鳴りが響き、狼の群れが巣穴の前を横切って行った。
群れが巣穴を通り過ぎると、狼は「今去ね」と言って、ばさを村の中心まで送り届けた。
ばさは「昨日撒いた塩が美味かったんだろうな」と思いながら家へ帰ったという。
またある時、塩売りばさが籠を背負って野原を歩いていると、狼が来て「ばさ、負うてくれ」とせがんだ。
ばさは「今日は籠を背負っているから、明日なら背負ってやる」とごまかして逃げ帰った。
だが翌日も翌々日も狼が来て「ばさ、負うてくれ」とせがんでくるので「盆になったら背負ってやる」と約束した。
そして七月三十日の盆の日、ばさは後ろから喰われないよう背中合わせに狼を背負い、村まで歩いて行った。
村の中心では村人たちが音頭を踊っていたので、狼が何事かと尋ねると、ばさは「あれはお前をたんじょまつり(*)するために、村の若い衆に来てもらったんだ」と答えた。
すると狼は「もう背負わなくていい。もう悪いことはしないから許してくれ」と言って逃げて行ったという。
『わが郷土 丸山小学校創立百周年記念誌』「塩屋の塩売りばさの話 -小橋-」
『子ども風土記』「おおかみと塩売りばさ」より
(*)青年たちが悪いことをしようとする者を懲らしめる行事だそうです。こわい。
伝承地:舞鶴市小橋