白盆の狐 (はくぼんのきつね)


昔、紅村に源吉と三次という村人がいた。
ある日、二人は白盆の林へ狸狩りに出かけ、見つけた穴を掘り返したところ、数匹の子狐が肩を寄せ合って震えていた。
ふと振り返ると、親と思しき白狐がこちらを睨みつけている。二人は気味が悪くなり、逃げるように帰宅した。
その夜、三次の枕元に白装束の女が立ち「我は福知山の稲荷の眷属、白盆の狐だ。我が仕える社は大いに栄え眷属も豊かだったが、今は参拝者も稀で供物も少なく、生活のためこの地に出稼ぎに来ている。我ら眷属は人に害を及ぼすことはないのに、何の恨みがあって我らを危険な目に遭わせた。返答によっては我にも覚悟があるぞ。いざ、いざ」と詰め寄った。
いつの間にか家の天井はなくなっており、頭上には太陽が照り輝いていた。
三次は声を出すことはおろか、金縛りにあったように身動きすら取れなかった。
そして半死半生のまま時が経つと、やがて女の姿は消え失せ、天井も元に戻った。
翌朝、外は一面雪に覆われ、家の周りには狐の足跡が沢山ついていた。
一方、源吉も同様の目に遭っており、二人は狐の棲み処に赤飯と生魚を供えて謝罪し、それからは白盆の林に行くことはなくなった。
その後、二人が福知山の稲荷神社を訪ねると、白装束の女が話した通り、朽ちかけた社があったという。

『京都 丹波・丹後の伝説』「白盆のキツネ」より


現在、白盆の林はとある電機会社の工場になっていて、林だった頃の面影はほとんど残っていません。
棲み処を失った白狐たちはまた別の土地へ出稼ぎに行ったのでしょうか。眷属も大変ですね。


伝承地:京丹波町豊田