龍灯の松 (りゅうとうのまつ)


文殊に“龍灯の松”と呼ばれる高い松があり、毎月十六日の夜、この木に龍神が龍灯を捧げ留まるという。
天和三年(1683)三月十六日、知恩寺で千部読経が行われたが、四日目の夜五ツ時(午後八時頃)に海の方から龍灯が現れ、一番高い松につるつると上った。
その日は庚申の夜で、そこにいた多くの参詣者が龍灯を見たという。
またこれより以前、南宗和尚の頃に知恩寺で千部読経が行われた時も、二日目の夜に龍灯が松に上ったという。
その日も庚申の夜だったという。

『宮津府志・宮津旧記』「龍燈松」
『丹後旧語集』「龍燈の松」より


灯(竜灯)と呼ばれる怪火が樹上や海上に浮かぶという伝承は各地に見られ、例えば栃木県には「雷電山の麓に池があり、雨降りの夜には多くの竜灯が現れ松の枝に上がる」という話が伝えられています。(『斉諧俗談』)

宮津の龍灯については、江戸時代の奇談集『諸国里人談』に「宮津では毎月十六日夜半、丑寅(北東)の沖より竜灯が現れ文殊堂の方に浮かび寄る。堂の前に松が生えているが、これを“竜灯の松”という。また正月・五月・九月の十六日の夜、空から一灯が下る。これを“天灯”という。更に“伊勢の御灯”という一火もある」と、龍灯の松やその他の怪火の説明がされています。
また『奇異雑談集』にも、宮津万福寺の愛阿上人が知恩寺で竜灯を見たという記述があります。


龍灯の松跡地
龍灯の松跡地。
現在は墓地になっていますが、かつてここに龍灯の松があったそうです。
龍灯の松は高さ百五十尺(約45m)、太さ三抱え余り、樹齢八百年の大木だったと言われていますが、昭和九年(1934)に発生した台風で折れてしまいました。(『郷土と美術』3年1号「橋立の名松」)
ちなみに享保十一年(1726)に版行された『丹後与謝海天橋立之図』(貝原益軒・著)の天橋立周辺の地図にも龍灯の松が描かれていて、古くからその存在を知られていたことが窺えます。
折れてしまったのが口惜しい。


龍灯の松の写真
在りし日の龍灯の松。(『丹哥府志』)
めちゃくちゃでかいですね。


福知山市の元伊勢神社にも龍灯が灯る杉があります。


伝承地:宮津市文殊