ひゃっかけ


ある節分の日、三津(網野町)の末次家の人が京都から帰る途中で道に迷ってしまった。
日も暮れてしまい困っていると、どこからか“ひゃっかけ(鬼)”が現れた。
道に迷ったことを伝えると、ひゃっかけは「節分の夜に豆まきをしないなら送ってやる。さぁ、わしの背に負われて目を瞑れ。良いというまで目を開けるな」と言った。
しばらくしてから「目を開け」と声がしたので目を開けると、いつの間にか三津の自分の家に着いていたという。
それ以来、末次家では節分の夜に豆まきを行わないという。

『ふるさとのむかしむかし』「節分の晚に豆まきはしない」より


ひゃっかけ(ヒャッカゲ、ヒャッカメ、百陰など)は久美浜町を除く京丹後地域に伝わる妖怪で、節分の夜に現れると言われています。
詳しくはこちら→ヒャッカゲ

網野町三津をはじめ京丹後地域の特定の家では、先祖がひゃっかけ(鬼)に助けてもらったことから、節分に豆まきや鬼の目突きをしません。
また網野町溝野、峰山町内記、久美浜町尉ヶ畑などには「鬼の宿」と呼ばれる家があり、これらの家は豆まきで追われた鬼を泊める場所とされています。
峰山町安には「鬼のタバコ宿」と呼ばれる家があり、この家では追われた鬼を招き入れるため、節分の日は家の裏口を開けておくそうです。
同じ地区内でも豆まきをする家・しない家に分かれていますが、網野町切畑の下切畑は地区全戸が豆まきをせず「鬼の村」と称したそうです。

宮津市にも「先祖が江戸からの帰り道に箱根で行き倒れていたところを鬼が助けて家まで運んでくれた」という同様の伝承があります。
先祖を送り届けた時、鬼は玄関先の石臼に座って一服して帰ったことから、その家では節分の日は鬼が座った石臼を桟俵の上に据え、白米、雑魚、昆布、灯明を供えて「鬼迎え」し、夜は玄関戸を開けて音を立てずに鬼の来訪を待つ儀礼が行われるようになりました。

ちなみに丹後町宮では節分に豆まきも鬼の目突きもしないと言われています。
宮の竹野神社は三上ヶ嶽の鬼を退治した麻呂子親王を祀っているので、もう鬼を追い払う必要がないからだとか。
(『京丹後市の民俗』)


伝承地:京丹後市網野町三津