縛られた狐 (しばられたきつね)


森本村の五郎兵衛は米を牛に乗せ、右坂を越えて岩滝(与謝野町)まで売りに行っていた。
ある時、五郎兵衛は商売を終え、油揚げを手土産に右坂を戻っていた。
すると足の悪い娘が先を歩いていたので、牛の背中に乗せてやり、落ちないように縄で縛りつけた。
やがて森本村が見えるところまで来ると、娘は「降ろしてくれ」と頼んだが、五郎兵衛は「村まで乗っていけ」と言ってそのまま進んだ。
娘は油揚げを狙う狐が化けたもので、大きな尻尾を出して暴れたが、縛られていて逃げられなかった。
正体を知った五郎兵衛は怒り、「お前は悪さばかりしている狐でないか。殺してやる」と言うと、狐は泣きながら「もう決して悪いことはしません」と懇願した。
それならばと思い縄を解くと、狐は喜んで逃げて行った。
それ以来、右坂に悪い狐は出なくなったという。
その後、五郎兵衛が伊勢参りに行った時、桑名(三重県)近くの山で狐が現れ「五郎兵衛さん、あの時はありがとう。今は桑名の山の中にいるわいな」と言ったという。

『丹後の民話 第一集 いかがのはなし』「しばられた狐」より


伝承地:京丹後市大宮町森本