日が奥の池の主 (ひがおくのいけのぬし)
昔、春日部村に源助とおたきという夫婦が住んでいた。
だが夫婦には子供がおらず、阿陀岡神社に子授けの願をかけた。
すると間もなく子供が産まれたので、松吉と名づけ大事に育てた。
ところが七年が過ぎた頃、松吉は夜な夜などこかへ出かけるようになった。
源助は不思議に思い後をつけたが、松吉は日が奥という深い谷に入って行ったので、怖くなって一目散に逃げ帰った。
翌朝、夫婦が目を覚ますと、松吉はいつものように眠っていた。
そこで松吉を起こし、毎晩出かけている理由を問うと、「私は古くから日が奥の池に棲む主です。毎晩その池の水を飲まないと暑くて生きていけないのです」と答えた。
そして松吉は「長い間お世話になりました。私は日が奥に帰ります。御恩返しに滝を作り、その水を村に流しますのでどうか役立てて下さい」と言って姿を消した。
翌日、日が奥の谷の崖から一斉に水が流れ始め、大きな滝となった。
その滝の水は谷を通って村の隅々まで流れて行き、飲み水や田圃の用水として使われるようになったという。
『丹波のむかしばなし 第七集』「日が奥に滝ができた」より
池の主の正体は不明。
伝承地:丹波市春日町多利