鐘撞山の蛇 (かねつきやまのへび)
昔、園部に仙之助という眉目秀麗の若者が年老いた母と二人で暮らしていた。
ある夜、仙之助の家に若い娘が訪れ、一夜の宿を求めた。
二人は天涯孤独だという彼女を家に住まわせ、やがて仙之助と娘は夫婦になった。
その後母は病死したが、産まれた子供と親子三人で仲睦まじく過ごしていた。
だがある日、仙之助が仕事から帰ってくると、その日に限って妻が迎えに出て来なかった。
不思議に思い、障子の隙間から部屋を覗き込んだ瞬間、仙之助は悲鳴を上げて気絶した。
やがて気がつくと、そばに妻が立っていた。
「私は山に棲む雌蛇です。あなたの美貌と男らしさに惚れ、妻になりたいと思い人間に化けていましたが、不覚にも正体を見破られてしまいました。正体を知られてはどうしようもありませんので、私は山へ戻ります。ですが棲み処の岩窟の入口が村人によって壊されようとしています。もし壊されれば穴の中で昼夜の区別が出来なくなってしまいますので、どうか時刻がわかるよう朝と晩に鐘を撞いて下さい」
妻は泣きながら語り終えると、次の瞬間、悲痛な叫び声と共に姿を消した。
それから数か月後、蛇の棲む岩窟は取り壊された。
するとその頃から毎日朝夕二回、子供を背負った男が山へ鐘を撞きに行く姿が見られるようになった。
しかし、その鐘の音もいつしか鳴らなくなった。
そして園部の人々はいつの頃からか、その山を「鐘撞山」と呼ぶようになったという。
『丹波の伝承』「鐘撞山の蛇性の淫」
『ふるさと口丹波風土記』「鐘撞山の蛇」より
人間に惚れた蛇が女に化けて嫁に嫁ぐ、いわゆる「蛇女房」タイプの異類婚姻譚です。
何故か参考書籍には仙之助が気絶した理由が書かれていませんが、おそらく蛇体となった妻の姿を見てビックリしたからだと思います。
蛇が棲んでいた鐘撞山は寺の裏側にそびえています。
かつては鐘撞山の頂上にあったと言われ、菅原道真に仕えた園部の代官・武部源蔵が時を計る方法を知らない村人のために鐘を鳴らしたという伝説もあります。
その他の蛇女房
伝承地:南丹市園部町美園町

