龍の彫物 (りゅうのほりもの)


昔、ある村の神社の本殿を再建することになり、神前に掲げる龍の彫物を彫刻師に依頼した。
完成した龍の彫物はあまり良い出来ではなかったが、村人たちはへつらって「立派な彫物だ」と褒めそやし、彫刻師も得意顔だった。
その時、みすぼらしい身なりの旅人が通りかかり、龍の彫物を見て「フフン」と含み笑いをした。
彫刻師が「私の作品の何がおかしい。彫れるものならお前が彫ってみろ」と怒ると、旅人は「あ、そうかそうか」と言い、荷物袋からノミを取り出して彫物に手を加えた。
するとでくのぼうのようだった龍は、今にも動き出しそうな程立派なものに生まれ変わった。
そして彫物が神前に上げられる日の朝、彫刻師が大工小屋に行くと、龍の彫物はべっとりと濡れ、川べりの雑草が貼りついていた。
村人たちは「龍が水を飲みに行ったんだ」と大騒ぎし、彫物を社前に釘で打ちつけて動けないようにした。
龍の彫物を手直しした旅人は、諸国を旅し、周枳の大宮賣神社に参拝する途中の左甚五郎だったという。

『周枳郷土誌』「龍の彫物」より


この甚五郎性格悪い。

その他の龍の彫刻が抜け出る話。


伝承地:京丹後市大宮町周枳