油を舐める大入道 (あぶらをなめるおおにゅうどう)


昔、石田の人々は日暮れになると大歳神社の常夜灯に交代で火を灯していた。
ある日、その夜の当番のいつという女が油壷をさげて神社へ向かうと、社の片隅に大きなものがぬぼーっと立っていた。
それは頭が軒先に届きそうな程大きな坊主で、いつを見てにたーっと笑った。
いつは腰を抜かし、その場にへたりこむと、大入道は「そんなに怖がることはない。わしは人並み外れて大きいだけじゃ」と言ってげたげた笑った。
そして大入道は逃げようとするいつに「わしが大きいのでびっくりしたじゃろう」と声をかけた。
いつは「お前より大きな坊主を見たわい」と捨て台詞を吐いて逃げ帰った。
翌日、大入道の噂は町中に拡まったが、人々は半信半疑だった。
そこで三人の若者が真偽を確かめるべく、日暮れに神社へ向かった。
若者たちは灯籠に火を入れ、木陰に隠れて待っていると、近くの八幡の森から旅装の大入道がずしりずしりと大きな足音を立てて現れた。
そして大入道は灯籠の油をぴちゃぴちゃと美味そうに舐め出したので、若者たちは一目散に逃げ帰った。
その後も夜になると大入道が現れては灯籠の油を舐めるので、町は大騒ぎになり、人々は何とかしようと意見を出し合った。
すると庄屋が「良い考えがある」と言って、夜に一人で神社へ向かった。
そして庄屋は姿を現した大入道に「あんたはとても大きくて立派だ。でも私はもっと大きい坊主を見たことがあります」と言った。
すると大入道が「わしより大きいのか」と尋ねたので、庄屋は「ずっとずっと大きいです。お腹なんて、とっても大きいです」と答えた。
翌朝、腹の皮が破れた大狸が、灯籠のそばに横たわっていたという。

『親と子の ふるさと西紀の民話集』「大入道」より


大入道は大狸が化けたもので、庄屋から「お前より体もお腹も大きい坊主がいる」と煽られて対抗心に火が点き「更に大きくなってやるわい」とお腹を膨らませたものの、膨らませ過ぎて限界突破し破裂してしまったのでしょうか。
庄屋が膨らみきったお腹に尖ったものを刺して破裂させた、という可能性もありますが。


伝承地:丹波市柏原町柏原