鎮守の森の狐 (ちんじゅのもりのきつね)
円頓寺という寺の東の山麓に鎮守の森がある。
その裏山に鎮守の使いである夫婦の狐が棲んでおり、この狐が鳴くと村に凶事が起こると言われていた。
ある年、村に火事が起こり、円頓寺も類焼したので再建することになった。
だが資金繰りが思うようにいかず、仕方なく鎮守の森の木を切って売ることにした。
ところがその夜から、鎮守の森の狐が寺や村の世話役の家の周りを悲しげな声で鳴き回るようになった。
村人たちはまた災難が起きるのではないかと不安になり、本堂に集まって薬師如来に教えを乞うた。
すると薬師如来は「鎮守の森の木を切ると狐の棲み処がなくなる。狐はそれを悲しみ鳴いて訴えているのだ」と告げた。
そこですぐに鎮守の森の伐採を中止すると、その夜から狐は鳴き回らなくなった。
だが木を売らなければ寺を再建することが出来ないので、村人たちは毎晩寺に集まって相談を重ねた。
そんなある夜、赤子を背負った上品な佇まいの美女が寺を訪れ、和尚に「乳が出なくて困っています。ここのお薬師さんは乳を授けて下さるとのことなので、ご祈禱をお願いします」と頼んだ。
早速和尚は薬師如来に祈り、祈祷済みの札とお洗米を女に渡した。
すると女は「これはお薬師さんにお供え下さい」と言って、包みを置いて帰って行った。
包みを検めると、中には寺が再建出来る程の大金が入っていた。
村人たちは「鎮守の森の伐採を止めたので、狐がお礼に来たのだ」と話し合い、その金を使って円頓寺を再建したという。
『くみはまの民話と伝説』「鎮守の森の狐」より
用明天皇の時代、麻呂子親王は三上山(大江山)の鬼賊(英胡・軽足・土熊)を退治した後、丹後国内に七つの寺を建立して七仏薬師を安置しました。
円頓寺はその内の一つだと伝えられています。
伝承地:京丹後市久美浜町円頓寺