生け獲りにされた狸 (いけどりにされたたぬき)
昔、砂方と間人の境に細い峠道があり、多くの魚売りが往来していた。
ただ、時々この峠で美しい娘に出会うことがあり、その時は必ず売り物の魚が沢山なくなっていた。
娘は古狸が化けたもので、逆らうと怖いからと言って皆諦めていた。
そんな中、砂方村の勇敢な漁師が「古狸を生け獲りにしてやる」と宣言し、雨の夜に籠一杯の鱈を担いで峠に向かった。
そして峠の頂上に着き、岩に腰かけて休んでいると、砂方の方から美しい娘が現れた。
漁師は件の古狸だと確信し、平静を装いながら被っていた笠の紐を締め直した。
すると急に背中が重くなったので、漁師は腕を後ろに伸ばし、笠にかけられていた古狸の両手を掴んだ。
不意を突かれた古狸は噛みついて逃げようともがいたが、笠が邪魔をして叶わなかった。
そして漁師は古狸を背負い、村まで戻ると、村人たちを集め「今からこの古狸を狸汁にして皆に振舞ってやる」と言った。
そして漁師は古狸を背負い、村まで戻ると、村人たちを集め「今からこの古狸を狸汁にして皆に振舞ってやる」と言った。
すると古狸はポトポトと涙を零し、訴えるようなまなざしを漁師に向けた。
それを見た漁師は可哀想になり、「助けてやってもいいが、その代わり砂方から出て行け。別の所に行っても人を化かしたりするな」と言って、古狸を解放した。
古狸は何度も漁師に頭を下げ、どこかへ逃げて行った。
それ以来、砂方と間人の峠で美しい娘に出会うことはなくなったという。
『丹後の民話 第三集 ふるさとのむかしばなし』「生け獲りにされた狸」より
伝承地:京丹後市丹後町間人