剃刀狐 (かみそりぎつね)


猪崎と川北の境に喜録寺という所があり、昔は山の上に七堂伽藍の立派な寺が建っていた。
だが、喜録寺は山と断崖に挟まれた細い道で、夜になると追剥ぎや人を化かす狐が出る危険な所だった。
しかもその狐は人を騙して髪の毛を剃ると言われ、実際に坊主頭にされた者もいたという。

ある時、猪崎村の男が「俺は絶対坊主頭にされない」と息巻き、腰に刀をさして喜録寺へ向かった。
やがて喜録寺の難所にさしかかると、対面から侍がお供を連れて歩いてきた。
男は道の端に避けたが、すれ違う時に刀のこじりを当ててしまい、怒り狂った侍に斬り捨てられそうになった。
そこへ喜録寺の和尚が通りかかり、「この男を弟子にするので、拙僧の顔に免じて無礼を許してほしい」と申し出た。
侍が承諾すると、男は弟子になる証拠として、その場で和尚に髪の毛を剃られ、坊主頭にされた。
そこへ心配した村の若者たちが駆けつけてきたが、いつの間にか侍も和尚も忽然と姿を消しており、坊主頭の男だけが残されていた。
男は狐に騙され、まんまと坊主頭にされてしまったという。

『福知山の民話と昔ばなし集』「剃刀狐」より


『舞鶴の民話』や『京都 丹波・丹後の伝説』にも喜録寺の剃刀狐の話がありますが、こちらは侍と和尚が男を騙して坊主頭にした後、狐の姿に戻って逃げていく、という少し違ったオチになっています。


喜録寺の道
猪崎と川北の境の道。
右手の山の上に喜録寺があったそうです。
山と川(断崖)に挟まれた狭い道で、昼でも薄暗く、見通しもあまり良くありません。
その割に交通量が多めなので、ある意味今でも危険な所かも。


伝承地:福知山市猪崎、川北