上臈池の亡霊 (じょうろういけのぼうれい)*
戦国時代、猪崎の高台に城があった。
だがある時、隣の城の軍勢に攻め込まれ、猪崎軍は全滅、城主も討ち死にした。
城主の奥方と幼い娘は城から落ち延びたが、国境の三坂峠で追手に捕らえられた。
そして奥方がお茶用の湯の水として使っていた上臈池(女臈池とも)の畔で首を切られ、池は二人の血で真っ赤に染まった。
その夜、隣の城では勝利を祝う宴が盛大に開かれたが、深夜になった頃、突然、一人の侍が悲鳴を上げて腰を抜かした。
その侍は奥方と娘を斬首した者で、手にした杯の酒が真っ赤な血の色に染まっていた。
侍だけでなく、大将の杯の酒も血が滲んだように赤く染まっており、宴の席は騒然となって皆我先に逃げ帰った。
それ以来、隣の城では奇妙なことが続き、大将も家来も原因不明の病で次々に死んでいった。
更に真夜中になると、上臈池に上臈姿の亡霊が出て、柄杓で水を汲む音をさせるようになった。
村人たちは哀れに思い、上臈池の畔に祠を建てると亡霊は現れなくなったという。
また、上臈池には腹の赤いイモリ(アカハライモリ)が棲んでいるが、これは奥方の血で染められたのだと言われている。
『福知山の民話と昔ばなし集』「上臈池(女臈池)」より
『京都 丹波・丹後の伝説』では、「敵軍の酒宴で杯の酒が赤く染まった時、壁に血で“よくも娘まで”と殴り書きされていた(後に敵将を憎む猪崎の村人の報復行為と判明)」「赤く染まった酒にビビって逃げ出した侍たちが上﨟池まで来ると、水面に奥方と娘の亡霊が立っていた」と、幾つかの怪異エピソードが追加されています。
その他、「猪崎城に潜入していた女スパイが捕まり、上臈池で斬首されてから、池に棲むドジョウの腹が赤くなった」という話も伝えられています。(『猪崎城山 橘城主とその奥方にまつはる伝説の跡を尋ねて』)
伝承地:福知山市猪崎(上臈池は現存していない)