田圃の火の玉 (たんぼのひのたま)*
本庄上の藤原国蔵氏が語った話。
昔、本庄上のある家の嫁が子供を産んで死んだ。
嫁は生前、妊娠中でも田植えを休むことが出来ない己の境遇を嘆き、「火の玉か幽霊になって出ちゃる」と恨み言を吐いていた。
すると嫁の死後、田圃の水口に火の玉が出ると噂になった。
その頃、国蔵氏の叔母は本庄宇治の家に嫁いでいたが、ある時、ナガタン打って(*)実家に帰ろうとした。
そして蓑の陰に隠れていたところ、田圃の水口から火の玉が出たという。
叔母を捜しに来た女たちもその火の玉を目撃し、「田圃のところに火の玉が出とる」と言って大騒ぎになった。
叔母は隠れたまま黙って見ていたが、火の玉は一時間程出ていたという。
『京都府伊根町の民話 泉とく子・藤原国蔵の語り』「火の玉」より
(*)「ナガタン(菜切り包丁)打つ」とは、嫁が嫁ぎ先にいるのが耐えられなくなり、実家に逃げ帰ること。一時的なものらしい。
伝承地:伊根町本庄上