峠の大入道 (とうげのおおにゅうどう)*
昔、野田川の奥山の峠に大きな古狸が棲んでいた。
その峠は夜になると大入道が出ると言って、村の者は誰も通らなかった。
ある日の夕方、盲目の旅人が奥山の峠を目指し歩いていた。
それを見た村人が「あの峠には大入道が出るんだ。行ったら殺されるぞ」と止めたが、旅人は「私は目が見えないので大入道が出てもわからない」と言って峠へ向かった。
一方、古狸は峠道を上って来る旅人を見つけ、「人が来るぞ」と喜び、呪文を唱えて大入道に化けた。
そして旅人の前に現れ、「こらあ、お化けだぞう」と言って、大きな目を剥いて睨みつけた。
だが旅人は目が見えないので、大入道を無視して歩き続けた。
古狸は慌て、更に大きく目を剥いて脅かしたが、それでも反応はなかった。
どれだけ脅かしても無視されるので、いよいよ古狸は腹を立て、「これでもか」と言って今にも飛び出しそうな程大きく目を見開いた。
するとその拍子にぽーんと目玉が弾け、死んでしまったという。
『丹後の民話 1 狐狸ものがたり』「大人道退治」より
伝承地:与謝野町石川(奥山の峠=石川の東にある地蔵峠のこと?)