ふた塚狐 (ふたづかきつね)
山崎村の外れの山中に「ふた塚」という薄気味悪い雰囲気の所がある。
そこを通る人は必ず美女に化けた狐に騙されると言われており、人々はその狐を“ふた塚狐”と呼んでいた。
昔、ある男が山崎村の法事に参加し、土産にもらったご馳走を手に夜道を歩いていた。
家に帰るにはふた塚を通らなければならず、男は急いで山を越そうと、酒に酔った足を懸命に動かして歩き続けた。
ところが山の中腹まで来た時、正面から美女が現れたので、男は「さてはふた塚狐だな」と思い、手のご馳走をしっかりと握りしめた。
すると美女が「おじさん、ご機嫌ですね。お風呂が沸いていますが、一浴びしませんか」と勧めてきた。
男は酒の勢いも手伝って、狐のことも忘れてしまい、「ひとっ風呂浴びるか」と着物を脱ぎ、その上にご馳走の包みを置いて風呂に飛び込んだ。
そうして湯に浸かっている内に眠たくなってきたので、男は風呂を出て横になると、そのまま眠り込んでしまった。
どれ程寝たかわからないが、ふと不快な臭いに目を覚まして辺りを見ると、風呂だと思っていたのは肥溜めで、着物の上に置いていたご馳走もすっかりなくなっていたという。
『語りつぐ 福知山老人の知恵』「ふた塚きつね」より
おじさん、警戒解くの早過ぎやしませんか。
伝承地:福知山市拝師