身なげつぼ (みなげつぼ)


後ヶ浜に“身なげつぼ”という岩がある。
昔、若い女がここで身投げし、その死体が沖にポッカリと浮かんだ。
だが漁師たちは気味悪く思い、女の死体を見ても見ぬふりをしていた。
ところが、ある漁師がその死体を見つけ、「可哀想に、わしはこれから漁に行くので乗せてやれないが、帰りに乗せてやるからここで待っていろ」と声をかけた。
そして漁を終えて戻って来ると、強い波があったにも拘らず、死体は見つけた時と同じ所に浮かんでいた。
漁師は「この女が弔ってくれと言っているのだ」と思い、死体を船に引き上げ、家に連れ帰って供養した。
するとそれから、その漁師は大漁が続き、やがて大金持ちになったという。

『丹後町の民話』「身なげつぼの話(間人)」より


海辺の一部地域では、海で見つけた水死体を「流れ仏」「エビス」「オホトケ」などと呼び、陸に連れて帰れば豊漁になると信じられていました。
逆に「水死体を連れ帰らずに見逃せば鰹が寄り付かなくなる(岩手県)」、「水死体を拾わないで海に押し出した人が七日経たずに死んだ(東京都・八丈島)」など、水死体を無視すれば不幸になるというパターンもあったようです。(『海村生活の研究』『ものと人間の文化史109 漁𢭐伝承』)

この俗信は京丹後市の沿岸地域にも広く見られるので、以下に簡単に紹介します。

網野町遊地区→水死体をエビスとして祀ると大漁になる。
同町磯地区→水死体(ドザエモン)を拾うと縁起が良い。
丹後町竹野地区→漁中に水死体を見つけたら「待っとれ」と言う。すると死体は戻って来るまで待っているので連れ帰る。死体を見つけたら漁が良くなる。
同町間人地区→水死体に「待っとれ」と声をかけるとそこで待っている。死体を丁重に扱えば良い漁が出来るが、放っておくと不幸になる。
(『京丹後市の民俗』)

身なげつぼ
身なげつぼ(壺)は後ヶ浜西側の岩場の端っこにあります。
甌穴(ポットホール)という潮溜まりになっていて、中に2mくらいの大きな丸い岩が沈んでいます。
穴に転げ落ちた岩が長い年月をかけて波の力で削られ、ここまで丸くなったのでしょうか。自然のパワーってすごい。

身なげつぼの岩
身なげつぼの中の岩。
すぐ横の海から波がざんぶざんぶと流れ込んでいました。満潮の時はこの一帯が沈むっぽいですね。


伝承地:京丹後市丹後町間人