白髭の老人 (しろひげのろうじん)*
延宝元年(1673)、河内国の小坊主・儀北は丹波国の円通寺を目指して旅をしていた。
その道中、春日庄長谷宿の外れで休んでいると、どこからともなく二匹の銀狐が現れ、儀北を促すように飛び跳ねた。
不思議に思い銀狐について行くと、やがて草に埋もれた屋敷に辿り着いた。
屋敷には大きな桜の木が生えており、そのそばに牢獄らしきものがあった。
すると銀狐はスーッと姿を消し、牢獄の中から鍬を持った白髭の老人が現れ、「ここは鎮守の領地である。何用で立ち入った」と聞いてきた。
儀北が「銀狐に案内されて来た」と説明すると、老人は「お前は高徳の師と見える。ここに堂を建て俗界を浄化する気はないか」と聞いてきた。
だが儀北が修行中の身だと言って断ると、老人は「修行をするなら円通寺に行くのはやめ、長谷宿の奥にある庵でしばらく里人に説教をして済度するように」と告げ、あっという間に白雲と化してしまった。
その後、儀北は老人の言葉に従って長谷宿の奥の庵に移り住み、数年間民衆の教化に努めたという。
『由緒を尋ねて』「国領の流泉寺」より
伝承地:丹波市春日町国領