丹治郎と化け狸 (たんじろうとばけだぬき)


昔、丹治郎という老人が家に帰ると、狸が戸口から中の様子を窺っていた。
丹治郎は餌を与えようとしたが、あまり親しくすると化かされるかもしれないと考え直し、狸を追い払った。
ところが、翌日も翌々日も家に来るのを見て、「化かす様子もないから仲良くしてやるか」と考え、狸を家に招き入れた。
そんなある日、丹治郎が峠を歩いていると、一体しかないはずの地蔵が六体に増えていた。
そこで六体の地蔵の口元に煙草の煙を順に吹きかけていくと、一体を残し、五体の地蔵は狸になって逃げて行った。
それから家に戻ると、外から「丹治郎や」と名前を呼ぶ声がしたので、仲良くしている狸だと思い戸を開けたが、外には何もいなかった。
ところが、戸を閉めて戻ると、狸はいつの間にか家の中に入って来ていた。
そして「長く養ってもらったが、化け狸であることを知られてしまったのでお別れだ。今日は餞別にご馳走を持ってきた」と言ってご馳走を広げた。
だが丹治郎は「狸が持ってきたものだから油断出来ない。ぼた餅と思わせて牛糞を喰わされるかもしれない」と考え、ご馳走に手をつけなかった。
すると狸が「もうお別れだ」と言うので、棲み処まで送って行くと、そこで再びご馳走を振舞われた。
今度はちゃんと食べたが、夜が明けて見てみると、丹治郎は草の中で寝ており、ご馳走はまぐさ(牛馬の飼料)に変わっていたという。

『丹後の民話 1 狐狸ものがたり』「丹治郎さんと狸」より


仲良くなった後も狸を警戒し続けていたのに、最後の最後で化かされてしまいました。
お別れだと思って気が緩んだのかな。


伝承地:京丹後市丹後町谷内