西瓜の蛇 (すいかのへび)


昔、白道路(はそうじ)村にお品という老婆がいた。
ある日の早朝、お品は綾部に行くために尻坂峠を歩いていた。
その途中、不意に尿意を催したので、しゃがんで用を足し、再び立ち上がろうとしたところ、急に体が動かなくなった。
力を振り絞って立ち上がろうとするが、まるで金縛りにあったように、少しも体を動かすことが出来なかった。
そこへ偶然、武士が通りかかり、青い顔でうずくまるお品を見て、背後の草むらを刀で薙ぎ払った。
すると何かが両断されたような音が聞こえると同時に、お品は再び動けるようになった。
背後の草むらを見ると、長さ五尺(約150cm)程の縞蛇が胴体を二つに斬られて死んでいた。

その年の夏、お品の家の畑に、いつの間にか直径二尺(約60cm)もの西瓜が成っていた。
そこでお品は武士の家を訪ね、以前助けてもらったお礼にと、その西瓜を差し出した。
武士はしばらく小首を傾げて西瓜を見つめていたが、やがて部屋の奥へ入って行った。
そして手に刀を携え、後鉢巻に玉襷、袴の裾をたくし上げた姿で戻って来た。
驚くお品に、武士は「今から西瓜の料理を見物させてやる。心を落ち着けてよく見ておけ」と言って、西瓜を刀で真っ二つに斬った。
すると西瓜は三尺(約90cm)余りも高く飛び上がった。
真っ二つになった西瓜の中には、一尺(約30cm)足らずの縞蛇が三匹がいて、いずれも胴体を二つに斬られて死んでいたという。

『何鹿の傳承』「蛇の執念」より


斬り捨てられた縞蛇の怨念が西瓜の中に宿り、武士に復讐する機会を狙っていたのでしょうか。
ということは、縞蛇はお品が畑に成った西瓜を武士にプレゼントすると予見していた……?
すごい先読み力だ。

ちなみに『古今著聞集』には「御堂関白(藤原道長)の物忌中に瓜が献上された。安倍晴明が占ったところ、瓜に毒気があるとわかった。そこで観修僧正が祈祷を行うと瓜が蠢いたので、医師の丹波忠明が瓜に二本の針を突き立て、源義家が刀で真っ二つに斬った。すると瓜の中には針で両目を貫かれ、頸を斬られた小蛇がいた」という話があります。
また、岡本綺堂『異妖の怪談集』には「贈答用の西瓜が女の生首に変わったので割ってみると、中から足に髪の毛が絡みついた青蛙が出て来た。その西瓜が採れた畑では以前にも西瓜の中から小蛇が出て来たことがあった」という話があります。


伝承地:綾部市白道路町