丹波・丹後の妖怪あつめ

京都府北部(丹波・丹後地域)の怪異妖怪伝承を紹介するブログです。

伊根町

休み石

休み石 (やすみいし)


泊の七神社(七社大明神)近くの大町という田圃の中に“休み石”と呼ばれる上部が平らな三尺(約90cm)程の石がある。
七神社には七柱の神が祀られているが、神々は社の中でかしこまっていると退屈なので、この石に腰かけ、夕涼みをしたり話をしたりして休憩するという。
休み石を動かせばその人の家族がぼけると言われ、誰も触らなかったという。

『語りによる日本の民話 10 丹後 伊根の民話』「七社大明神の休み石」より


七社神社は井室・六万部・泊の三集落の氏神とされていますが、昔は自分の村のものにするために集落同士で御神体を取り合ったことがあったそうです。
ある時、井室の村人たちが七社神社から御神体を背負って持ち出したところ、途中で後光がさして周囲が明るくなり、そのせいで泊の村人に見つかってしまいました。
御神体が再び泊に戻された後、罰が当たったのか、井室集落に流行病が蔓延しました。
ですが御神体の持ち出しに関わらなかった二軒の家からは、一人も病人が出なかったと伝えられています。(『丹後 伊根の民話』)


伝承地:伊根町泊(休み石の場所は不明)


ギャータロウ

ギャータロウ


伊根湾には“ギャータロウ”という海河童が棲んでおり、海の底から足を引っ張るという。
ギャータロウに足を引かれないようにするには、陸に上がる前に海へ向けて水をかけ、水が飛んだ場所まで泳いで戻って来る。
そして「海の神さん 親も子も流しませんように ほーいほい」と呪文を唱えるという。
ギャータロウの正体は、伊根湾に棲むワニ(鮫)とも言われている。

『海の京都 日本の源流ガイド』「ギャータロウ」より


かつて伊根の舟屋の子供たちは夏になると朝から海で遊んでいましたが、午後三時頃には「ギャータロウが出る」と言って陸に引き上げていました。
魚は日暮れになると餌を求めて動き出すので、大人たちは「ギャータロウが出る」と言って脅し、子供たちがワニなどの危険な生物に襲われないようにしていたそうです。
どうやらギャータロウは舞鶴市の“堤のガロン”と同じく、子脅しのために語られた妖怪っぽいですね。



伝承地:伊根町平田、亀島(伊根湾)


蛇池の大蛇

蛇池の大蛇 (へびいけのだいじゃ)


津母の「蛇池」は、どんな旱魃でも涸れたことがないと言われている。
昔、この池に大蛇が棲んでいて、靄のかかった雨の日になると美女に化けて現れていた。
ある時、美女に化けた大蛇は村の男に見初められ、結婚して女児を産んだ。
ところが、出産の時に大蛇であることを男に知られてしまい、離縁されてしまった。
大蛇は離縁された後も男がいない時に家を訪れ、女児に乳を飲ませて育てていた。
やがて女児は成長し、着物や本を欲しがるようになったが、家は貧乏で買ってやることが出来なかった。
すると見知らぬ旅人が家を訪れ、女児に着物や本を与えて去って行った。
そんなある日、男は蛇池の畔で離縁した女と出会う夢を見た。
女は「離縁されてからこの池で暮らしていますが、私の力がなければ娘は育てられないと思い、片目を乳に見なして飲ませ、もう片目を着物や本に変えて与えました。ですが両目を失って何も見えなくなってしまったので、もう娘やあなたに会うことはないでしょう」と語った。
その後、男は女児を大切にし、立派に育て上げたという。

『語りによる日本の民話 10 丹後 伊根の民話』「津母の蛇池」より


いわゆる「蛇女房」タイプの異類婚姻譚です。
目玉を乳代わりに吸わせて育てるパターンはよく見ますが、目玉を着物や本に変えて与えるというのは珍しいですね。



伝承地:伊根町津母


田圃の火の玉

田圃の火の玉 (たんぼのひのたま)


本庄上の藤原国蔵氏が語った話。
昔、本庄上のある家の嫁が子供を産んで死んだ。
嫁は生前、妊娠中でも田植えを休むことが出来ない己の境遇を嘆き、「火の玉か幽霊になって出ちゃる」と恨み言を吐いていた。
すると嫁の死後、田圃の水口に火の玉が出ると噂になった。
その頃、国蔵氏の叔母は本庄宇治の家に嫁いでいたが、ある時、ナガタン打って(*)実家に帰ろうとした。
そして蓑の陰に隠れていたところ、田圃の水口から火の玉が出たという。
叔母を捜しに来た女たちもその火の玉を目撃し、「田圃のところに火の玉が出とる」と言って大騒ぎになった。
叔母は隠れたまま黙って見ていたが、火の玉は一時間程出ていたという。

『京都府伊根町の民話 泉とく子・藤原国蔵の語り』「火の玉」より


(*)「ナガタン(菜切り包丁)打つ」とは、嫁が嫁ぎ先にいるのが耐えられなくなり、実家に逃げ帰ること。一時的なものらしい。


伝承地:伊根町本庄上


膳椀の出る穴

膳椀の出る穴 (ぜんわんのでるあな)


本庄浜村の海岸に沿って舟で十町(約1km)程行った所に、二、三間(約3.6~5.4m)四方の深い穴がある。
御神体などはないが、この穴に潜って祈願すれば霊験があると言われており、中には夥しい数の満願成就の小さな幟が立てられている。
以前は穴の入口で願いを込めれば、中から膳椀の類が出て来たという。
また、但馬(兵庫県北部)では、武家屋敷の天井から金銭が落ちてきたり、戸棚から衣服が出て来たりと奇怪なことが度々起こったが、こちらは狐狸の仕業だと言われている。

『丹哥府志』「かくれ里」より


伝承地:伊根町本庄浜

狐のおばけ

狐のおばけ (きつねのおばけ)


筒川の菅野集落の入口に不動明王が祀られており、その左に大きな岩山がある。
昔、夜十二時から一時頃になると、その岩山に何十個もの提灯がずらりと一列に並ぶことが何度もあった。
その提灯は“狐のおばけ”だったという。

『宮津の民話 第二集』「タヌキとキツネの世の中」より


伝承地:伊根町菅野


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