丹波・丹後の妖怪あつめ

京都府北部(丹波・丹後地域)の怪異妖怪伝承を紹介するブログです。

宮津市

池野々の大ぐちなわ

池野々の大ぐちなわ (いけのののおおぐちなわ)


昔、木子の池野々という所に大きな沼があった。
その沼に大ぐちなわ(大蛇)が棲んでおり、近くを通る人を呑み込んでいた。
人々はこの大ぐちなわを退治しようと考え、麦で作った人形の中にもぐさを詰めて火をつけ、沼の畔に立てておいた。
そしてしばらく待ってから沼へ行くと、大ぐちなわが腹を上向きにして死んでいた。
大ぐちなわは麦人形を人間と間違えて呑み込み、腹の中から焼かれて死んだのであった。
その後、人々は大ぐちなわの骨で蛇橋という橋を作ったという。

『弥栄町昔話集』「池野々大蛇退治」より


大蛇が火薬入りの人形を呑み込んで爆死(焼死)する話。

蛇橋に座る謎の女の子。


伝承地:宮津市木子


かろびん

かろびん


一条天皇の時代(986~1011)、“かろびん”という、顔は人間に似て、体は鳥の姿のものが山中村で羽を休めていた。
そこへ酉気という仙人が来たが、通力を失い、かろびんと共に過ごして遂に夫婦となった。
その後仙人は死んだが、かろびんはこの地に留まっていたことで自然と羽が腐ってしまい、天に帰ることが出来なくなった。
かろびんは露を食物として長い年月を過ごし、曾志比丘という人に頼んで入定したという。

『与謝郡山中村旧記』より


名前や人面鳥というフォルムから考えるに、かろびんとは迦陵頻伽(かりょうびんが)のことじゃないかと思います。
迦陵頻伽とは、上半身が人、下半身が鳥(雀や水鳥)の姿をした仏教世界における想像上の鳥です。
非常に美しい声で鳴き、その声は仏の次に素晴らしいものだとされていて、極楽浄土に棲むとも、その美声で仏法を説く存在とも伝えられています。(『日本の美術』481号「人面を持つ鳥-迦陵頻伽の世界」)
何で浄土の鳥が人間界の片田舎にいたのかはわかりませんけど。

ちなみに、参考資料には酉気仙人が通力を失った理由は書かれていません。
『今昔物語集』に「飛行術を会得した久米という仙人が大和国の吉野川を飛んでいる時、川べりで洗濯をしている女の白いふくらはぎを見て心が乱され、通力を失ってしまった。仙人は女の元に落下し、その後二人は夫婦になった」というエピソードがありますが、ひょっとすると酉気仙人もかろびんの美しい?姿を見てドギマギし、その結果通力を失ってしまったのでしょうか。

また、宮津の地誌『宮津府志』には「皆原村(山中村の西隣)の山中に“迦陵頻伽の塚”という古塚があり、昔、ここから音楽が聞こえた。この塚に近寄れば祟りがあると恐れられ、村人は周辺の草木を刈り取らない」という話があります。
この塚もかろびんと何かしら関係があるのかもしれませんね。かろびんが入定後に埋められた塚なのかも。


伝承地:宮津市山中


大手川のカッパ

大手川のカッパ (おおてがわのかっぱ)


宮津の大手川のそば(馬場先付近)に住む男性が、知人から聞いた話である。
その知人によると、昔、大手川にはカッパがいたという。
知人は「大手川のカッパは甲羅がなく、人間の子供のようだが、肌はピンク色だった。冬でも大手橋の下でバチャバチャと動いていて、それを見ていると「カッパなんか見るもんじゃない」とよく母親に叱られた」と男性に語ったという。

『みやづ・わが町』「私の好きな大手川とカッパ」より


この話を聞いた男性も子供の頃、母親に「ガータロに足を引っ張られるから大手川の深い所には行くな」と注意されていたそうです。


大手川
宮津市内の大手川と大手橋。
カッパはこの辺りでバチャバチャやっていたそうです。
ピンクの肌はすごく目立ちそう。

大手橋の下
大手橋の下。
濁っていて水底は見えません。
昭和の頃は葦が生い茂り、鰻や鯰、海老など多くの魚が棲んでいたそうです。カワウソもいたんだとか。


伝承地:宮津市鶴賀、馬場先付近(大手川)


竜になった尼僧

竜になった尼僧 (りゅうになったにそう)


昔、滝馬の金引の滝付近に吉祥院という寺があった。
吉祥院最後の住職となった尼僧は、寺の下にある白竜の滝に身を投げたという。
当時、白竜の滝は底なしと言われており、青黒く渦を巻く滝壺に浮かんだ尼僧の死体を見た人々は「尼僧がアオリイカになった」と恐れたという。
また一説には、尼僧は竜になって滝の上の不動尊を守護したとも伝えられ、母竜は洞窟に通じる重岩に、子は下流の分宮(和貴宮)神社に棲んだという。
そして聖川(白竜の滝下流の川?)は、竜の親子が通う道と言われている。

『わがふる里 滝馬』「金引の滝にまつわる伝説」より


母竜と子(子竜?)が登場しますが、参考書籍には竜親子についての説明がないので詳しいことはわかりません。
尼僧が竜になった後に産んだ子供でしょうか。
となると母竜子竜の他に父竜もいる……?


伝承地:宮津市滝馬


日ヶ谷の白狐

日ヶ谷の白狐 (ひがたにのしろぎつね)


昔、日ヶ谷に老婆が住んでおり、家の前に小さな洞穴があった。
その洞穴に一匹の白狐が棲んでいたが、大根を盗んだり、娘に化けて餅と騙して馬糞を食べさせたり、いつも悪戯をするので村人から嫌われていた。
ある雪の夜、老婆が家で大根を煮ていると、村人が来て「白狐が死んでいるぞ」と言った。
老婆は急いで外へ出たが、白狐の姿はどこにもなく、「白狐に一杯食わされた」と慌てて家の中へ戻った。
すると大根を煮ていた鍋は空になっており、囲炉裏の前では白狐がグーグーといびきをかいて眠っていた。
怒った老婆が薪で殴りかかると、白狐はパッと起き上がり、外へ逃げて行ったという。

『子どもがつづる丹後の歴史』「昔話白ぎつねを聞いて」より


大根を平らげた後も逃げずにその場で呑気に眠りこけるとは……大胆な狐ですね。


伝承地:宮津市日ヶ谷


なべ山の金の鶏

なべ山の金の鶏 (なべやまのきんのにわとり)


岩滝口駅の裏に「なべ山」という鍋を伏せたような山がある。
夜になるとこの辺りから「コーココッ、コーココッ」と鶏の悲しげな鳴き声がするという噂があり、気味悪がって誰も近づかなかった。
昔、盗人が金の鶏を盗み、なべ山の辺りでなくしたという話があり、金の鶏が居場所を知らせるために鳴いているのではないかと言われている。

『須津の民話』「なべ山の金の鶏」より


山や塚に金の鶏が埋められていて中から鳴き声が聞こえてくるという「金鶏伝説」は、日本各地に伝えられています。
鶏の代わりに黄金の茶釜が埋められていたり、掘り出そうとすれば不幸に見舞われたりと、色々なパターンがあります。
丹波・丹後地域にも広く伝わっていますが、特に亀岡市に多く見られます。

なべ山
須津のなべ山。
田圃の中にポツンと小さな山があります。山というか丘って感じですね。
「鍋を伏せたような山」と言われていますが、木が生い茂っているせいで本来の形はよくわかりません。
今も金の鶏は埋まったままなんでしょうか。


伝承地:宮津市須津


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