丹波・丹後の妖怪あつめ

京都府北部(丹波・丹後地域)の怪異妖怪伝承を紹介するブログです。

京都市

豆が降る

豆が降る (まめがふる)


文安元年(1444)三月四日、洛中に雨が降り、その雨に混ざって大豆や小豆が降ってきたという。
それは大豆のような形をしているが、大豆でも小豆でもない、木の実のようなものであった。
また、いつの時代かわからないが、大麦や米が空から降ってきたこともあったという。

『史料大成 第30 康富記』より


『康富記』は室町時代の官吏・中原康富が記した日記です。
中原康富はこの豆降り事件の後述に「福井県の飯降山は昔、この山に米が降ったことから名づけられた」という話や、菅原道真編纂の『類聚国史』から引用して「周王の屋敷の屋根に火の化鳥が麦を啄みに現れた。また后稷(農業の神)の時代には五穀の種が空から降ってきた」という話を付け加えています。

吹雪の夜に嫁が降った話はこちら。
嫁が降る


伝承地:京都市内(御苑周辺?)


河原太郎

河原太郎 (かわらたろう)


享保十六年(1731)五月二十六日の夕方、三条大橋の下から真っ黒な者が現れた。
大勢で追いかけると、それは孫橋の下を通って東の茶屋へ入った。
人々は茶屋の中と外から狩り出したが、その姿は消え、遂に見つけることが出来なかった。
川の上流に棲む“河原太郎”が、先日の洪水で流されてきたのだろうと噂された。

『月堂見聞集 巻之二十三』より


名前から考えるに河童の類でしょうか。


伝承地:京都市東山区大橋町・三条大橋


から瀧の天狗

から瀧の天狗 (からたきのてんぐ)


光砥谷の奥、天狗峠の下に「から瀧」がある。
ある時、津船嘉平という職人がから瀧で炭焼きをしていると、小さい男の子が仕事を手伝いに来た。
男の子は天狗が化けたもので、嘉平が正直者かどうか調べに来ていた。
天狗は二日三日と来て、五日目に嘉平を滋賀県の三ノ宮祭に連れて行ってご馳走し、再びから瀧の炭竃まで送り届けた。
嘉平は天狗に背負われて往復したが、その時は目を開けてはならないと言われた。
天狗に背負われて行くと、飛び立っていく羽の音が聞こえたという。

『京都廣河原民俗誌』「から瀧の天狗(能見町光砥谷)」より


その他、から瀧には瀧をねぐらにする大蛇や、灯りが点く杉の話が伝えられています。
から瀧の燈明杉

伝承地:京都市左京区広河原下之町


六部塚

六部塚 (ろくぶづか)


文化年間(1804~1818)、ある六部が塔集落の三宅谷に住み着いた。
六部は自分で掘った洞窟に籠もり、鐘を鳴らし経を唱えて過ごしていたが、やがて死亡し、それと共に鐘の音は途絶えた。
それから百年後のある日、再び鐘の音が聞こえてきた。
そこで村人たちは三宅谷に石塚を建立し、六部の霊を祀った。
以来、塔集落では毎年八月二十三日に、石塚の前で御詠歌をあげるようになったという。

『京北町誌』「六部塚」より


*六部=巡礼僧のこと。


伝承地:京都市右京区京北塔町


から瀧の燈明杉

から瀧の燈明杉 (からたきのとうみょうすぎ)


光砥谷の奥のから瀧に「燈明杉」と呼ばれる杉の大木があり、夜になると灯りを点けると言われていた。
この燈明の光が杓子屋町の川向かいにある大杉に映り、またその灯が「杜若の池」の水面に映ることで、杜若の花が咲くという。
だがある時、山国村の材木師がから瀧付近の木を買い取り、燈明杉もろとも伐り倒してしまった。
そして伐った木をまとめて積み上げたところ、一夜にして全て燃えてしまったという。

『京都廣河原民俗誌』「から瀧の燈明杉(能見町光低谷)」より


杉に灯る燈明の光が巡り巡って最終的に池の水に映ることで杜若が咲く……なんだかロマンチックですね。
伐り倒されちゃいましたけど。
ちなみに、杓子屋町には「杜若」という名字の家があり、その家の庭には惟喬親王が植えたとされる杜若が群生しているそうです。


伝承地:京都市左京区広河原下之町


川の主

川の主 (かわのぬし)


昔、ある男が京から福知山へ帰る途中、桂橋に立つ美女に「どこまで帰るのか」と尋ねられた。
男が「福知山まで」と答えると、女は手紙を出し「これを千代川村(亀岡市)の川関に投げ込んでほしい」と頼んだ。
男は手紙を受け取ったものの、川に投げ入れることに納得がいかず、途中で中身を検めた。
手紙には「この間はご馳走になりました。ちょうど良い人間が見つかりましたので、お約束通り差し上げます。桂川の主より。大堰川の主様へ」と書かれていた。
もしこの手紙を川に投げ込んでいれば、大堰川の主に喰われていただろう。
男は命拾いしたことを喜びつつ帰ったという。

『口丹波口碑集』「川の主」より


昔紹介した舞鶴市の“由良の浜姫”と同じく、「水の神の文使い」(『日本昔話名彙』)や「沼神の手紙」(『日本昔話大成』)タイプの話です。
詳しくは由良の浜姫の記事で書いていますのでよければご覧下さい。

伝承地:京都市右京区・桂橋/亀岡市千代川町川関(大堰川)




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